ライブグッズの制作において、多くの企業が直面するのが「在庫リスク」です。グッズは売上を大きく伸ばす可能性を持つ一方で、販売予測が外れた場合には在庫として残り、コスト負担や機会損失につながる可能性があります。
本ページでは、在庫リスクの具体的な課題と、その対策について整理します。
ライブグッズにおける在庫リスクは、単に「売れ残る」という問題にとどまりません。
過剰在庫は保管コストや廃棄ロスにつながり、逆に在庫不足は販売機会の損失を招きます。どちらも収益に直接影響するため、適切なバランスが求められます。
また、ライブグッズはイベント性が高いため、販売タイミングが限られる点も特徴です。
イベント当日を過ぎると需要が急激に落ちるケースも多く、一般的な商品よりも在庫リスクが顕在化しやすい領域といえます。
例えば、1,000人規模のライブでグッズを制作するケースを考えます。
購入率を30%と見込み、300個のグッズを制作したものの、実際の購入者が200人にとどまった場合、100個が在庫として残ることになります。この在庫は保管・再販の手間が発生し、最終的に値引きや廃棄となれば利益を大きく圧迫します。
一方で、200個しか用意していなかった場合、販売機会を逃し、本来得られたはずの売上を取りこぼす可能性もあります。ライブグッズは「作りすぎても、少なすぎてもリスクになる」という特性を持っています。
アパレルグッズを制作した際、過去のデータに基づかず平均的なサイズ配分で発注。結果、特定のサイズだけが即完売し、需要の少ないサイズが大量に残ってしまったケース。売り上げはあるものの、残った在庫の原価が利益を上回り、トータルでは赤字に転落してしまいます。
「今、流行っているから」という理由で、季節性の強いアイテムや特定の流行を取り入れた雑貨を大量に制作。しかし、ライブ延期やリリースの遅れにより販売時期がズレた結果、ファンの興味が他へ移り、デッドストックと化してしまったケース。在庫の処分にも費用がかかり、二重の損失となります。
在庫リスクを完全にゼロにすることは難しいものの、適切な手法を組み合わせることで、リスクを大幅に抑えることは可能です。
ここでは、実務的に有効な対策を紹介します。
まず重要なのは、感覚ではなく一定のロジックに基づいて発注数を決めることです。基本的には「来場者数 × 想定購入率」をベースに算出します。購入率はジャンルやアーティストの特性によって異なりますが、一般的には20〜40%程度※が目安とされています。
過去の販売データがある場合は、それをベースに調整することで精度を高めることができます。また、複数アイテムを展開する場合は、人気が分散することも考慮し、アイテムごとに数量配分を設計することが重要です。
在庫リスクを抑えるためには、発注段階だけでなく販売設計も含めた対策が必要です。以下のような手法を組み合わせることで、リスクを現実的にコントロールできます。
| 対策 | 期待できる効果 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 小ロット 対応業者に 依頼 |
10個、50個単位で発注し、在庫を極小化 | テスト販売、新人アーティスト |
| 受注生産 | 注文が入ってから製造し、在庫リスクゼロに | 常設の公式ショップ、EC販売 |
| 予約販売 | 予約注文を受け、その数だけ作る。完売欠品がない | ツアー前の先行販売、高額商品 |
| オンライン 販売 |
会場在庫を絞り、残りを事後通販で調整 | 全国のファンへのフォローアップ |
初回は小ロットで制作し、売れ行きを見ながら追加発注する方法は、在庫リスクを抑えるうえで非常に有効です。そのためには、売れ行きを見てから追加発注ができるOEMメーカーを選定します。国内自社工場を持つメーカーであれば、数日〜1週間程度で補充できるケースもあり、欠品と在庫過多の両方を防げます。
注文が入ってから製造・発送を行う受注生産(ドロップシッピング)形式であれば、在庫を持たずに販売することができます。特にオンライン販売と相性が良く、在庫リスクを最小化できる点がメリットです。ただし、通常のOEMと比較して単価や納期に制約があるため、用途に応じた使い分けが重要です。
在庫リスクを大きく低減できるのが、ライブ開催前にECサイトで予約を受け付ける「受注生産方式」です。注文数に基づき製造するため在庫リスクと欠品は排除されます。また、高単価なアニバーサリーアイテムや、サイズ展開が多いアパレルなどは、この方式が合理的です。
ライブ当日で完売しなかった商品や、あえて余裕を持って制作した在庫は、後日オンラインで販売することで消化が可能です。現地に来られなかったファンや、追加購入を希望する層にアプローチできるため、販売機会の最大化にもつながります。
単品では動きが鈍い商品でも、人気アイテムと組み合わせたセット販売にすることで販売促進につながるケースがあります。価格的なお得感を出しつつ在庫を効率的に動かせるため、在庫消化の施策として有効です。
このように、在庫対策は「作り方」と「売り方」の両面から設計することが重要。状況に応じて複数の手法を組み合わせることで、リスクを抑えながら売上最大化を目指すことができます。